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2009年8月9日日曜日

テレビの概念が変わる日

家庭の中心であるテレビを巡り、総合電機各社は激しい戦いを繰り広げています。テレビを押さえればテレビとリンクするその他の家電を支配できるからです。ですが、個人的にはそろそろ「インターフェイス戦争」にシフトしていくように思います。つまり、「テレビをつけたときの最初の画面を誰が支配するか」ということです。

テレビには番組表やニュースが実装されるようになりました。ユーザはチャンネルをザッピングするのではなく、番組表を見てみたいテレビを選びます。現状、テレビ起動時のインターフェイスはテレビをつくったメーカが支配していますが、遅かれ早かれ、この画面をマイクロソフトやヤフー、グーグルが奪いにくるでしょう。インターネットのポータル画面戦争と同じように。

インターネット企業はパソコンのポータルを支配したのと同様、強力な検索エンジンで勝負を仕掛けてくるでしょうが、テレビのユーザは検索なんて面倒がるのではないかと思います。電源入れたらあとは見るだけ、というのがテレビのよさなのだから、ポータルは番組表や天気予報を掲載したり、お勧め番組や情報を提案してくるようでなくてはなりません。さらに、ユーザインターフェイスはパソコンのような複雑なものでは受け入れられないでしょう。リモコンのボタンを1,2回押せば目的のコンテンツにありつけるようでなくては、テレビのユーザは見向きしないでしょう。

インターフェイス戦争になれば、俄然ゲーム業界にチャンスが生まれると思います。彼らは寝ても覚めても直感的なインターフェイスのことを考えているからです。

現在のように、「電源を入れると電源を消したときの局の番組が流れる」から、「電源を入れるとまずポータル画面が表示される」と変わると、テレビのそもそもの位置づけが変わります。広告収入のありかたも変わるでしょう。テレビをつけるとポータルが示され、ユーザはテレビ番組を選んだり、情報を仕入れたり、ゲームをしたりし、出かけるときには携帯をテレビの画面に近づけてテレビ番組やゲームのリアルタイムな状況ごと持ち運ぶ、近い将来そんな生活が普通になるのではないかと思っています。

こういうライフスタイルをどこが提案してくるか・・・家電メーカかもしれないし、テレビ局かもしれないし、携帯電話会社かもしれないし、アマゾンやグーグルかもしれないし、アップルかもしれません。その中で任天堂も有力な候補かと思います。というわけで、この本を読んでみました。まあ、上記のようなアイデアとこの本の内容は直接関係ありません。以下本の内容の備忘録。

井上理 ”任天堂 驚きを生む方程式”

・岩田社長は、ハル研究所時代の入社二年目の1983年、任天堂がゲーム専用機のファミコンを、マイコンに比べ破格の15,000円で発売した瞬間に、本社京都に直接営業しに行った。それが岩田社長と任天堂の付き合いの始まり。

・スーパークリエイター宮本茂氏は品行方正が嫌い。不良な自分が好きなタイプでパチンコもタバコもやる。が、40歳で健康にはまり、やめた。そしてWiiFitの開発につながっていく。

・任天堂の採用ページでは、岩田社長が現場社員にインタビューする形式をとっているが、本当の面談のような深い内容の会話がなされている。岩田社長はスタッフの担当業務やスタッフ同士の関係性を完璧に把握しており、採用ページへの掲載があろうとなかろうと、密なコミュニケーションを大事にしていることが読み取れる。

・岩田社長のプレゼンにはグラフや表、数字が過剰なほどに多用される。山内前社長の直観力にはかなわないと考えた岩田社長は、科学的裏づけを何よりも大事にする。緻密なデータは現場社員とのコミュニケーションツールともなる。

・任天堂は事業領域を「娯楽」にとどめ、組織も極力コンパクトに抑えている。多角化しない。尖っているから強く、強みというのはそういうものだと岩田社長は考えている。

・拡大もM&Aもしないかわりに、任天堂社員はめったなことでは退職しない。宮本茂氏も他社から相当な金額を積まれても、「こんなに恵まれた場所はない」と残り続けている。ただ、確かに個人報酬はそれほど高くないが、他社が提示する報酬をはるかに上回る「研究開発費」を会社から割り当てられる。「個人のお金と仕事で使うお金はまったく別」と宮本氏は言う。任天堂の研究開発費は多額で年々増加傾向にある。

・横井軍平氏は、山内元社長と車に乗り合わせたとき、「手のひらで隠せる電卓サイズで、サラリーマンがさりげなく暇つぶしできるゲーム機はつくれないか」と提案し、ゲームウォッチのヒットにつなげた。常に企画をあたためていれば、社長と同席したときに提案できる。エレベータトークの典型。

・娯楽産業は「ハード体質:高機能、高品質のものをより安く作ろうとする性質」ではなく「ソフト体質:コンテンツの面白さやルール、仕組みを生み出そうとする性質」が重要。山内元社長が岩田社長を選んだのも、岩田社長がソフト体質だったからとのこと。

・山内元社長は社名に関連して、「人事を尽くして天命を待つというのは違う。人事は尽くせない。努力は際限ない」と語る。一方「人の力が及ばない、運というものはある」とも言っている。いいときは運に感謝し、悪いときは運がなかったと、次へ進む。運を重んじる経営は、常に平静であろうとする経営でもある。

・岩田社長は過去に梅田望夫氏と会ったことがあり、一緒に何かできたらと考えていた。そして、梅田氏が社外取をしていたはてなと組んで「うごくメモ帳」を世に出した。お互い面白いと思える人との関係を大事にする。

ソフト会の帝王

世界征服から、一転苦境に追い込まれつつあるビル・ゲイツが、絶頂期にあったときのゲイツ本です。

ジャネット・ロウ ”ビル・ゲイツ 立ち止まったらおしまいだ!”

・高校生のゲイツはIBMやDECに手当たりしだい電話し、コンパイラやエディタを売り込んだが、断られっぱなしだった。そんな中、過去にバグ取りのアルバイトでつくった「問題点報告書」がある技術者の目に留まり、本格的なプログラムの仕事が舞い込んだ。テキスト化して残るコンテンツは手を抜かずに作りこむこと。

・マイクロソフトは、ハードワークを社員に強いる。そのペースが保てるひとつの理由は、ゲイツが眠らないこと。彼は常に新しい収入源を探している。

・ゲイツの檄の飛ばし方は尋常ではなく、周りが警察を呼ぼうとするほど。メンバーが考え抜いたかどうかを試している。準備が十分でないままゲイツと話すことはもってのほかだが、反論する人間をゲイツは尊敬する。

・ゲイツは年に数回、「Think week」を設けている。オフィスをはなれ、別荘でコンピュータ科学の最前線の話題を扱った博士論文を読んでいる。

・ゲイツは毎晩1時間以上、週末には数時間を読書に充てる努力をしている。新聞も毎日読み、週に数冊の雑誌に目を通す。興味の幅を広げるために、拾い読みではなく隅から隅まで目を通す。ゲイツの愛読書は、「華麗なるギャッツビー」「ライ麦畑でつかまえて」など。ビジネス書でゲイツが推薦するのは、「GMとともに」。ゲイツは熱心な読書家で、旅行には読みきれないほど多くの本を持っていく。

・ゲイツの一番の興味は「人間の脳」近年は遺伝子工学にも関心を寄せており、「遺伝子の川」という本を愛読している。

・遺伝子工学に魅力を感じてはいるものの、ゲイツは真剣に「他の道を選んでいればよかった」と考えているわけではない。ゲイツは「決断」ということを大事に考えていて、いい言葉を残している。

「同じ決断を二度するな。最初の決断に十分時間をかけて確固たる判断を下せば、同じ問題を二度考えなくてすむ」

「私は過去を後悔するような無駄なことはしない。私は決断をした。そして、その決断を全うする最善の方法は、ひとたび決断したら決してぐらつかないことだ。もしかしたら偉い医者になっていたかもしれないのに、とか、すごいテニスプレーヤーになれたかも、とか、あるいはプレイボーイ、あるいはポーカーの名手になれたかも、などと考えてはならない。自分が決めたことをうまくやり遂げるには、覚悟を決めて、自分の仕事に前向きにならなければならない」

ノーベル賞経済学者

なかなか読み進められなかった本ですが、そうこうしているうちに本の賞味期限を過ぎてしまったような気がします。内容は自由主義・市場主義の押し付けとブッシュ体制に対する厳しいコメントで埋められています。

ジョセフ・E・スティグリッツ ”スティグリッツ教授の経済教室” 

・世界銀行とIMFが唱えていた経済戦略、つまり成長のためには政府の役割を縮小し、民営化を進め、規制を取り払い、社会的セーフティネットを縮小することだとする「ワシントン・コンセンサス」は幻想だった。これを無視した国は、これに従った国よりも高い成長を達成した。また市場メカニズムは、危機の際は機能しないどころか、非常事態を悪化させる。

・スカンジナビア諸国の成功の要件は以下のとおり。
 ①強力な教育プログラム。生涯学習も重視している。
 ②失職した労働者の再就職のための訓練を支援する積極的な労働市場政策。
 ③完全雇用。インフレの低位安定よりも完全雇用が不可欠。
 ④強力なセーフティネット。個人のリスクへの積極性を高めるためにも必須。

・温暖化ガス排出削減についてスティグリッツ氏は、キャップアンドトレードによる市場原理を働かせるよりも炭素税の導入に賛同している。

・過剰なインフレ懸念は杞憂。インフレ率の穏やかな上昇が天井知らずのインフレにつながることはない。むしろインフレを低く抑えすぎると成長が妨げられる可能性があることさえあるという研究成果もある。中央銀行の使命はインフレの抑制ではなく、「高く安定した成長と低い失業率」だと認識すべき。

価格設定をおろそかにしない

ある上司の本棚に面白そうな本があったので、借りてみました。使えそうなポイントをメモしておきます。

山梨広一 "マッキンゼー・プライシング"

「顧客認知便益」を横軸、「顧客認知価値」を縦軸に整理する。原点から45度の直線を「価値均衡線(VEL)」と呼ぶ。業界に変化が発生するたびに、VELは引きなおされる。VELと自身のポジションの関係をうまくマネジメントする、「ダイナミック・バリュー・マネジメント」が重要。特にVELからの離脱は競合や顧客がどう動くかの綿密なシミュレーションが必要。

平均価格を1%下げると、営業利益は8%減少する。5%の値下げを埋め合わせるには売上を18.7%拡大しなければならない。「標準価格」から、ディーラーマージンや特別ディスカウントなどを省いた「伝票価格」さらにそこから現金割引や売り掛けコスト、現場値引きや伝票外プロモーションディスカウントを除いた「ポケット・プライス」を正確に把握し、標準価格に対するポケット・プライスのばらつきを把握した上で、それを1%向上させることは大きなインパクトがある。

企業の価格決定能力を左右するのは、市場環境、具体的には市場の競合度合い(供給側の要素)と事業機会の大きさ(需要側の要素)である。営業所間の価格格差を正しく把握するには市場環境の洞察が必要。

2009年5月10日日曜日

ものごとは、そもそもシンプル

会社の後輩が読んでいた本のカバーがかわいかったので奪って読んでみました。

エリヤフ・ゴールドラット ”The Choice”

「ものごとは、そもそもシンプルだ」と信じることを主張しています。自然科学の分野で成果を挙げてきた筆者だからこその視点でしょうね。

・たとえば、品切れと売れ残りという問題に対して、賢い人ほど根本的な問題を「需要予測の精度向上」としてしまう。だが、これでは問題は解けない。「ものごとはそもそもシンプルだ」というレンズを通して問題にあたることで、抜本的な解決策が見えてくる。
・複雑な事象をシステムとして構造化し、根本的な問題をさぐる。現実に発生している現象の自由度はそれほど高くないことがほとんどだ。ものごとはそもそもシンプルだと信じ、掘り下げていくと、原因が収束していく。
・望ましくない状況は、「根本的な対立を解決せずに妥協した」結果であると考え、根本的な対立が何かを見出す。(たとえば、「品切れを防ぐためにたくさん注文する」VS「売れ残りを防ぐために少なめに注文する」)そしてその前提を見つけ、その前提を疑う。(たとえば、正確な数量を注文する唯一の方法は、前もって将来の需要を知ること)

・クライアントに特定の行動を提案するとき、その行動と成果の因果関係を理解してもらわなければならない。理解してもらうときには、「クライアント自身の経験」をもって検証する。そして、テストを通じてその提案の実効性を体験してもらう。
・よくできたソリューションというのは共通点がある。それは、どれもごく当たり前のことで、最小からわかっていそうなことだということ。しかし、それに気づくのは、いつもソリューションができあがってからのこと。ソリューションを完成させた後で、なぜこんな当たり前のことにもっと早く気がつかなかったのだろう、とがっかりするのが常である。

・ゴールドラット・グループのコンサルティング・フィーはクライアント企業の企業価値増加分の10%で、業績連動制をとっており、数百万ドルという契約になるのも当然である。
・ゴールドラット・グループの主催するセミナーに参加した企業は、半数程度が実際のプロジェクトのコンサルティング申し込みへとつながる。

なるほど、体系化はされておらず、ゴールドラット博士の思いつきのような本にも読めるのですが、着想として参考になる部分もありました。それにしてもゴールドラット・グループっていろんな形の「Just in Time」を、まだその手法が導入されていない企業にはめ込む、というソリューション一本なのかな。Just in Timeの導入は簡単なことではないだろうし、結果としてゴールドラット・グループは反映しているのだから、もちろん問題はありません。この本の中のわずかな事例だけで判断するのは早計ですが、問題解決というよりは、ソリューションプロバイダのようにも思えます。

借りた本なので、早く返さないと。

中国とつきあうには

たくさん本は読んでいるのですがブログにアップするのが手間でサボってしまっていました。

高橋基人 ”中国人にエアコンを売れ!”

ダイキンの中国ビジネスを立ち上げ軌道に乗せた人の本です。中国ビジネスの裏話が満載で本当におもしろく、よい本です。が、腹芸、寝技、袖の下のオンパレードで、真似するのは若造には無理だな・・・。たくさんのノウハウが書かれていますが、人脈と情の世界をどう制するかという話なので、もっともっと修行が必要そうです。

中国ビジネスのコツ
・ビルの建築時に「ダイキン」の名前を設計図に入れてもらうため、中国建設設計院を徹底的に囲う。囲い方は一緒に酒を飲む、旅行をする、とにかく人間関係を作る。そして会合にかならず「お土産」を用意する。
・政府高官の人事情報を誰よりも早く入手し、入手したらすぐに挨拶に伺い、その人が昇級したら再度挨拶に伺う。
・交渉の際は番頭を狙い撃ちする。番頭に取引を持ちかけ、渋ったら「今後一切御社とは取引しません」というメモにサインしろと迫る。番頭は意思決定できないので、とりあえず商品を置いてもらえることになる。
・どこの土地に行っても最初に公安局、公安局長とは仲良くなっておく。
・血縁、地縁を大事にする中国の風習を理解し、政府高官の血縁と仲良くなっておく。日本に帰ってきても関係を絶やさなければ、彼らから最新の情報が渡ってくる。
・日本人は白黒はっきりさせるのが好きだが、中国はまだら色。適当に真面目で、清濁あわせ呑み、好奇心強く、政府の役人や政治家とつきあって情報を取ってきたりロビー活動をするのを苦にしない性格でないと中国ではやっていけない。さらに、中国の歴史や文化、習慣を頭に徹底的に叩き込んでおくべき。同時に、日本の歴史や文化も理解しておかなければならない。

中国人と付き合うために理解しておくべきこと
・中国は朝令暮改の国。日本企業がある土地に工場を建て、その後その土地のインフラが整うなどして地価が上がると、道路拡張などを理由に立ち退きを迫り、渋ると共産党員を動員して嫌がらせをする。
・中国企業は自社の利益につながるならどことでも組む。日産と組みながらトヨタと組んだって不思議ではない。組んだら徹底的に利用し、技術を盗もうとする。中国でのビジネスは「情」をからませたほうが絶対に負ける。
・日本には中国政府と契約している「コアマン」と呼ばれる中国人の「日本ウォッチャー」が270人ほどいる。政府の役人に限らず民間人であっても日本に情報源を持つ人は多く、情報ネットワークがきっちりできている。
・トヨタは中国から、日本の自動車会社で最初に中国に進出しないかと持ちかけられた会社だが、その条件として図面の提供を求められ、オファーを突っぱねた。同時期にフォルクスワーゲンも中国への進出を持ちかけられたが、彼らは図面を提供した。だが、その図面は二世代も前のものだった。日本人は生真面目にとらえすぎ。それでは中国ではやっていけない。
・中国人は面子を大事にするので、「あなたにこれができるか?」という質問はNG。「没問題(問題ない)」としか返ってこない。「こういう仕事をしたことがあるか?」などと事実を問うべき。ただし、とことん付き合ったら彼らほど義理堅い人間はいない。土地柄でも異なり、北京人は面子を意識するが、上海人とのトラブルは金でカタがつく。全般的には中国は拝金主義と思っておけば痛い目にあわずにすむ。
・酒に対する考え方は日本と全く違う。まず飲ませられる。そして、酒につぶれる人間は徹底的に侮蔑される。面子を大事にするので席次には注意する。招かれたときには食事は残す。すべて食べてしまうと「食事が足りなかった」という意味になってしまい相手の顔をつぶしてしまうことになる。

中国ビジネスに「本当に」必要なことが書かれている本です。同時に、中国ビジネスの厳しさを思い知らされました。

2009年4月12日日曜日

生涯プロフェッショナル

書き込みが月イチになってしまっていますが・・・なかなかこまめにやれないものです。ずっと前に読んでいたのですが書き込むタイミングを逸していた本があります。

Elizabeth Haas Edersheim
”マッキンゼーを作った男 マービン・バウアー”

久しぶりによい本だと思いました。最前線の現場の情報や知恵をトップに届け、組織の運営について客観的なアドバイスを与える仕事を経営コンサルティングと名づけたマービン・バウアー。そのマービンが59年間をささげたマッキンゼーの話です。倫理観に基づき自分のルールを厳格に守るマービンの思想・行動をまとめておきます。

・マッキンゼーは会社ではなくプロフェッショナル・ファーム。事業計画はなくあるのは大志。モノやサービスの買い手である消費者のためではなく、依頼人であるクライアントのために働く。
・気取った言い回しや婉曲な表現はしない。本当のことだけを正確に単純明快に話す。
・気になることや賞賛すべきことがあれば、すぐに手書きでブルーのメモに書いて社内に回覧させる。対話するだけでなく、文字に書いて明確に示すことが重要。
・服装には厳しい。靴は磨いてあるか、ブルーのシャツを着ているか、靴下は地味か、ひげはきれいに剃ってあるか、など。クライアントに信用されるためには、クライアントと同じような格好、無難な格好にしておけと指摘する。
・パートナーシップ形態にこだわり、株式公開には大反対。コンサルタントはIバンカーのように大金持ちにはなれないことを納得しなければならない。
・傾いた企業に入り込んでターンアラウンドすることには反対。一流ではない企業と付き合うことは評判を落とすし、マッキンゼーはターンアラウンドが得意ではない。一流のクライアントと付き合う機会を逃したら、もはやマッキンゼーはプロフェッショナルではなく、金儲けのために働くビジネスマンになってしまう。
・面倒見がよい。自分がかかわりを持つ人には頻繁に手書きの手紙を送ったり、式典には必ず出席したり、その人がどういう仕事をしていたかをちゃんと覚えていて、折に触れ「あの件はうまくいったか?」とたずねたり、自分の時間を使う。

また、マービンはプロフェッショナルとしてのリーダーシップを6項目挙げています。

①顧客の利益を最優先し、それ以外のことを考えない
②裏表なく正しいことを曲げないスタンスを維持しつつも、常に人の話に耳を傾ける
③とにかく事実にこだわり、事実に立脚する
④解決策を行動に結びつける
⑤すべてのメンバーに全力を尽くさせ、一分一秒を無駄に使わせない
⑥職業倫理を徹底させ、組織の信頼を築ける行為に対しては毅然と対処する

そのほか勉強になったのは、コマーシャル・ソルベンツ社へのコンサルティングの話。まだジェームズ・O・マッキンゼーの下で働いていたマービンは、コマーシャル・ソルベンツ社会長に調査結果を直言。指摘は正しいものの、会長は激怒。それについてマッキンゼーはマービンに、「君の結論はただしい。だが二つの間違いを犯した。年齢と状況判断だ。まず私に報告すべきだった。私から言えば、同じことを言っても彼はあんなに腹を立てなかっただろう」と指摘した。いくら正しいことを言っても自分の息子のような人間から直言されたら受け入れられない。相手の立場から自分がどう映るのか、自分の言葉がどう響くのか、相手の反応を考慮に入れなければ、どんな判断も適切にはなりえないことを学んだ、という経験です。

多くの経営者の尊敬を集め、精力的に働きながらも全く私欲がなく、99年の人生を全うしたプロフェッショナルには頭が下がります。

2008年11月11日火曜日

いまさらながら

今さらではありますが、ちょっときっかけがあったので、手にとって読んでみました。といっても私は読むのは初めてでしたが。

大前研一 ”企業参謀”

MBAの入学生や、新入社員のビジネスマンがよく読む本らしく、確かに基礎的なことが書かれてあります。ただし、かなり昔に書かれた本にもかかわらず、とても体系だっていてわかりやすい。具体的ですぐに使える考え方も掲載されています。気になった点をいくつか要約しておきます。

・問題発見のコツは、問題点の絞り方を現象追随的に行うこと。現象の洗い出し、グルーピング、抽象化を通じて課題を抽出する。

・中期経営計画の策定は、以下の8つのプロセスですすめる。
①目標値の設定
②既存事業をあるがままに行った場合の基本ケースの確立
③原価低減改善ケースの算定
④市場・販売改善ケースの算定
⑤戦略的ギャップの算定
⑥戦略的代替案の摘出
⑦代替案の評価選定
⑧中期経営戦略の実行計画策定

・⑤戦略的ギャップとは、オペレーショナルな努力の限界値と目標値のとの差であり、戦略によってこれを埋めることを狭義の企業戦略と呼ぶ人もいる。

・事業ポートフォリオ管理は「自社の強みを表す変数」を横軸に、「業界の魅力度を表す変数」を縦軸にとったマトリクスで評価する。PPMはその一例。

・マーケティングは「製品・市場戦略」と呼ぶべき。すべての経営課題は製品・市場戦略にその根源と解決の緒を見出すことができる。製品・市場戦略策定のプロセスは、以下の7つのプロセスを、ひとつずつの製品、市場について丹念に実施することが必要。
①市場性の動的把握
②内部経済の分析
③競合状態の把握
④KFSに照らした自社の強さ、弱さの客観的理解
⑤改善機会について仮説の抽出、評価
⑥改善実施計画作成、実施
⑦モニタリング、軌道修正

・参謀が戦略思考家たることを妨げる五戒とは以下のとおり。
①「if」という言葉に対する本能的恐れを捨てよ。代替案を考えることに不精するな。最悪のケースも常に想定せよ。
②完全主義を捨てよ。相手よりもほんの一枚上をゆく市場戦略を、タイミングよく実施することが勝負のカギだ。
③KFSについては徹底的に挑戦せよ。常に何がKFSであるかという認識を忘れず、全面戦争ではなくKFSに関する限定戦争に、徹底的に挑め。
④制約条件に制約されるな。一足飛びでも理想的な状態を思い描ければ、制約条件を構成する障害物が特定される。
⑤記憶に頼らず分析を。常識や疑問の余地のない対象に対しても分析を怠らないこと。

・企業戦略とは「競争相手との相対的な力関係の変化を計画すること」であり、収益性の改善や組織改革、人材育成などのオペレーショナルな改善とは区別するべき。頭の働かせ方も全く異なる。その方法には3つある。
①経営資源の配分の面で、相手よりも濃淡をつけ、KFSに集中的に資源を注入して優位に立つ方法
②直接競合していない製品における技術や販売網などをうまく当該製品に反映させる方法
③相手のやらないことをこちらが積極的に開拓して市場を切り開く方法

・KFSを見つけるためには企業活動を上流から下流へ分解する。そして、硬直状態に陥った場合には、常識的な意味でのKFSから離れることを考える。

・成功した事業には、次の四つの要件が必ず見られる。
①事業領域の定義が、明確になされている。
②将来の予言ではなく、現状の分析から将来の方向を推察し、因果関係について極めて簡潔な論旨の仮説が述べられている。
③自分のとるべき方向について、いくつかの可能な選択肢のうち、比較的少数のもののみが採択されている。また、選択された案の実行に当たっては、かなり強引に人、もの、金を総動員して、たとえ同じようなことを行っている競争相手がいても時間軸で差が出ている。
④基本仮定を覚え続けており、状況が全く変化した場合を除いて原則から外れない。

さすが、考え方をすぐにでも応用できそうなレベルにまで具体化されていて、海外で教科書として使われているのもよくわかります。なかなか勉強になりました。こういう本を30代で書いたという能力と経験は恐るべきだと思います。


2008年9月28日日曜日

タイトルが素敵

久々に推理小説を読んでみました。本屋でかなりお勧めされていたので。 

歌野晶牛 ”葉桜の季節に君を想うということ”

ある裕福な老人が被害にあい、そのバックにある組織の存在を感づいた家族が、探偵事務所でのバイト経験を持つ主人公に調査を依頼する・・・

内容はもちろん書きませんが、ハードボイルド・アクションや恋愛の要素も入ったいい物語。トリックも驚きます。ただ、そこまでお勧め図書になる理由はわからなかったな・・・
もしかすると、この本で一番ぐっと来るのはタイトルかも。タイトルはかなり素敵ですね。つい手にとって読みたくなります。

そういえばずっと昔にも彼の作品”白い家の殺人”を読んだことがあるのですが、全く記憶に残っていない。相性悪いのかな。

2008年9月15日月曜日

電気羊の夢

以前ドワンゴの夏野剛氏のインタビューで、「SFからインスピレーションを得ることがある」と言っていたのを聞いて以来、SFに興味を持っています。というわけで、さっそく読んでみました。

山本弘 ”アイの物語”

SFらしく宇宙空間やAIの話がいっぱい出てきます。物語の構成としては、アイビスというアンドロイドが、いくつかの物語(作中作)をフィクションとして語りながら、ヒトとはどういう存在なのかをAIの視点から捉えていく、というもの。オムニバス形式で進むひとつひとつの作中作のおもしろさもさることながら、そういう作中作がひとつにつながっていく感じがぐっときます。

映像をイメージさせる具体的な描写も秀逸。いつか映画化されることでしょう。実写になるかアニメーションになるかはわかりませんが。2時間モノとかにまとめるのはおそらく無理なので、CSとかでドラマ仕立てになるかもしれません。

AIを持つアイビスが、作中作の主人公に自分(I)を投影し、ヒトにはわからない(虚数i)視座から語る、愛の物語。ヒトの夢、フィクションの海がつくる未来に生まれたアンドロイドたちの言葉は、振り返って「ヒト」に思いを馳せる機会を与えてくれます。

2008年7月21日月曜日

勉強法の勉強はもうやめます

帯の「もっと若いときに読んでいれば・・・そう思わずにはいられませんでした」の文言に惹かれ、本を買ってみました。

外山滋比古
”思考の整理学”

最近本当に多く出回っている、勉強、情報の取り扱いの方法論の本です。1986年の本なのですが、勉強法ブームに乗って本屋でも平積みされています。売れているみたいですね。

内容としては、学校教育で育て上げられた、受動的にしか知識を得ることができない「グライダー人間」から脱却し、自分で主体的に知識を得ていく「飛行機人間」になるための心がけやノウハウを紹介しています。

いくつかいいなと思った考え方を記録しておきます。

①昔の武術の世界では、秘術は教えなかった。師匠の教えようとしないものを奪い取ろうとする弟子だけが、いつしか飛行機人間となっていき、免許皆伝を受けた。

②朝の脳は活発で楽天的。簡単な仕事を「朝飯前」と言うが、朝飯前の時間が最も成果のあがる時間で、「難しいことも朝飯前なら処理できる」という意味だったのでは、と著者は想像する。生活を朝型にしなさい。(著者はさらに、朝飯前の時間を作るために朝飯を抜け、そうすれば午前中いっぱい仕事の効率があがる、とすら言っている)

③(著者は大学の先生なので)学生から論文のテーマについて相談があったときには、1つではなく2,3のテーマを持って研究を始めるように指導する。そうすると、独善に陥らず、独創的なものができる。

④講義や講演を聞いても、めったにメモをとらないこと。メモをとると、人は安心して忘れてしまう。つまらないことこそメモをとり、早く忘れてしまいなさい。

⑤思考の整理に最も有効なことは「忘却」である。自然忘却の何倍ものテンポで忘れることができれば、歴史が何十年もかけて行う古典化という整理を、数年でできるようになる。古典的になった興味、着想なら、簡単に消えるはずがない。

⑥誰が発案したによらず、アイデアには必ず良いところがある。とにかく誉めること。ピグマリオン効果として実証されているように、根拠がなくてもほめることが、成果につながることもある。

⑦創作へのエネルギーはとにかく代償行動で肩代わりされやすい。詩人になりたい人が出版社に勤めるなら、編集よりも発送係の方がいい。編集業務によって満たされてしまっては、詩人になれないからである。同じように、口八丁の人は考えをしゃべることで満足して、実際の行動がおろそかになりがちだ。本当に成し遂げたいことはみだりにしゃべってはいけない。

それなりに参考にはなる本なのですが、絶賛されている理由はよくわかりませんでした。勉強法の本は山ほど出版されているけど、本当に参考になる本は見たことがないな。というより、勉強法を勉強しているうちは何も成し遂げることはできないんだろうな、と反省してしまいました。

会計の入門書

グロービスで会計のイロハを学んだところで、以前買ったまま本棚に眠っていた会計の本を再度取り出してみました。

國貞克則
”財務3表一体理解法”

具体的な会計処理をした際の、PL、BSへの計上の仕方と、CS(直接法・間接法)の動きを追った説明で、非常にわかりやすかったです。会計を理解するという意味ではとても良い本。さおだけ屋の本よりずっとわかりやすいし役に立つと私は感じました。

淡々と説明が続くので、演習+回答形式にしたほうがもっと身になったかなとも思います。例えば、「資本金300万円で会社を設立すると、財務3表はどうなる?」などとしてブランクのシートに読者に書き込ませた上で、その説明に入る、とか。

会計をざっくり理解するための読み物的な本なので、リファレンス的には使えませんが、会計の入門書としては良書だと思いました。

2008年7月2日水曜日

エレベータテストの本質

あまり興味が湧かなかったのですが、先輩から渡されたので読みました。 

細谷功
”地頭力を鍛える”

最近「地頭」って言葉がはやっているみたいですが、言語・計数・図形の能力、とかもっとわかりやすく表現した方が良いと思います。

著者は冒頭で地頭力を定義しようとしていますが、未知の領域で問題解決をしていける能力だとか、地頭がいいと形容されるだとか、漢字一文字で表現すると「理」だとか、定義になっておらず、著者自身の地頭はどうなんだ?と思ってしまってあんまり精読はしませんでした。

簡単に言えばフェルミ推定の紹介本です。それなら「フェルミ推定のやりかた」とかそういうタイトルにすればよいのに・・・

この本の主張は以下の3点。

①結論から考える
②フレームワークで全体をとらえる
③抽象化・単純化する

当たり前のように言われていることなので意識もしていないですが、最近仕事で、「報告・連絡・相談」のタイミングを逸するという失態を犯してしまって、①の重要性をあらためて感じました。その理由は以下の通り。

「結論から考える」というのは、仮説思考をが必要なビジネスマンには日常的な行為ですが、それが「報・連・相」を行うのに決定的に重要だと思います。自分の抱える全ての仕事の結論を、常に意識していれば、とっさに上司とあったときに、すぐに状況を報告できるということです。

「報告資料を今作っているので、できたらお伺いします」ではスピードが遅すぎます。報告しなければならないということは、判断を仰がなければならないということであり、いつそういうタイミングが来ても、報告、相談ができるように、結論を頭に置いておく必要があります。つまり、「エレベータテスト」の本質は「抱える全ての案件の結論を常に頭においているか」なのだなと思います。「冒険だと思っても、大胆な仮説をおいてとにかく結論を出す」という著者の主張にも共感するところがありました。

あと、地頭力だけでは人は動かない、つまり人は大嫌いな人からの理にかなった依頼よりも、大好きな人からの理にかなわない依頼を承諾するということも著者は指摘しています。それもそうだよなぁと思ってしまいました。

2008年6月30日月曜日

セールスマンのノウハウ

昨年度面倒を見てくれたマネジャーから本を薦められました。分厚くて時間がかかりましたが、読み終わりました。

ロバート・B・チャルディーニ
”影響力の武器”

交渉術の古典的な本で、人間の自動反応のパターンの例とその反応を引き起こすスイッチの入れ方を取り上げてた本です。人を自動的な反応に駆り立てるものとして7種類あるそうです。

①コントラスト
アパレルのセールスは、スーツとセーターとネクタイを購入しようとするお客には、まずスーツを買わせるのだそうです。セーターやネクタイはスーツほど値が張らないため、コントラストで、お客に高価なセーター、高価なネクタイを買わせることができるという方法です。

②返報性
他の本では互恵性(レシプロシティ)なんて言われたりもしていますが、例えば高価なプレゼントをもらったら、何かお返しをしなければならないという義務感を発生させると言うことです。
この発展型で「ドア・イン・ザ・フェイス」という手法があるそうですが、これは譲歩をすることで相手の譲歩を引き出す手法です。「1万円貸してほしい」と言われ、拒絶した場合に、「じゃあ千円でいいから貸して」と言われると貸してしまうことを利用したセールス手法です。

③一貫性
何らかの悩みで困っている人が、自分を救ってくれそうな研修を見つけたとする。研修の説明会に参加した後、信憑性に確信を持てないにもかかわらず、研修費用を振り込んでしまう現象です。説明会に参加する、つまりその研修に対して何らかのコミットメントをしてしまった以上、その人にとってはその研修こそが自分を問題から解放してくれるものでならなければならないのです。
この発展型としては「フット・イン・ザ・ドア」という手法があり、訪問のセールスマンがドアに足を挟んで玄関に入ってくることを許したら、そのセールスマンと契約を交わすことも許してしまうのだそうです。
他にも、「ローボール・テクニック」といって、嘘でも良いからとにかく先に小さな承認を取り付け、それから本当の依頼をする方法もあるそう。

④社会的証明
どこにでもいそうな普通の人が商品を推奨するテレビコマーシャルがありますが、これは消費者自身に、自分と近い人が商品を気に入っていると思わせる方法だそうです。つまり、ひとはどう振る舞えばよいのか確信が持てないとき、他社の行動を参考にして、それも類似性の高い他社の行動を参考にして自分の行動を決めるそうです。

⑤好意
セールスマンのことを好きになってしまったら、ものを買ってしまうという単純な主張です。では、人はどういう人を好むかというと、外見が良い人、自分に似ている人、お世辞を言ってくれる人、よく知っている人、だそうです。
モーターショーなどに女性のモデルがたくさんいるのは、車に関心が高いのは多くは男性であり、女性への好意が車への好意に伝染するからという理屈だからだそう。

⑥権威
例えば健康食品を、セールスマンが紹介するのと医者や学者が紹介するのとでは影響がまるで違います。権威を発揮するものとして、著者は肩書き、服装、装飾品の3つを挙げています。身なりの大事さは知り合いの金融機関のセールスマンも強く主張していました。

⑦希少性
よくあるパターンですが、「限定」や「本日限り」の文字に踊らされてしまうということです。人には心理的リアクタンスというものがあり、機会が喪失してしまいそうになると自動的に反発するのだそうです。

判断を保留している状態、不安や緊張を強いられている状態、思い悩んでいる状態など、人は一刻も早く思考から待避したい状態になると、そこから解放されるために自動反応をする習性を持っていて、そのパターンを利用したセールステクニックは強力だということです。

膨大な事例が紹介されているのですが、小粒で具体的すぎて、著者の主張を裏づけるには不十分ではとも思ったのですが、書籍が高価であり、また大量の文章を読ませることで読者に達成感を味わわせる(「③一貫性」の利用)ことと、実証実験を紹介することで多くの学者が自分の主張の裏付けを行っている(「④社会的証明」と「⑥権威」の利用)ことにより、自分の意見の正当性を読者に納得させようとしていて、まさに自分の主張をこの書籍自身で実践しているところがおもしろかったです。

九徳と人望

仕事でおつきあいのある方から本を紹介されたのですが、本屋に無かったので同じ作者の本を買って読んでみました。

山本七平
”人間集団における人望の研究”

文化、宗教を問わず、平等社会であれば、どんな集団においても人望のある人がリーダーとなる、いやリーダーにさせられる、という現象から紹介し、人望こそが人間評価の最大の条件であるという主張を基盤に著者の見解を述べています。

古今東西の古典を分析し、人望ある人の条件について考察しています。その結果、朱子学の入門書である近思録における「九徳」を心得ることが人望の条件と述べています。九徳とは以下の通り。

①寛にして栗(寛大だが、しまりがある)
②柔にして立(柔和だが、ことを処理できる)
③愿にして恭(まじめだが、ていねいでつっけんどんでない)
④乱にして敬(事を治める能力があるが、慎み深い)
⑤擾にして毅(おとなしいが、内が強い)
⑥直にして温(正直で率直だが、温和)
⑦簡にして廉(大まかだが、しっかりしている)
⑧剛にして塞(剛健だが、内も充実)
⑨彊にして義(強勇だが、ただしい)

「克伐怨欲(他人に打ち勝とう、自己主張をしよう、それを妨害する人をおとしめよう、どん欲になろうという感情)」を捨て、「七情(喜・怒・哀・懼(おそれ)・愛・悪・欲)」を抑制して中庸を保ち、「プライド」から脱し、「九徳」を会得することが、人望の用件であるということです。

 人望は「異質の超能力」だが、天性の能力ではない。
 自分の心を抑え、行動を常に九徳に照らし合わせて検証し、
 訓練を経て身につけるものである。

というのが著者の主張のまとめであり、一見当たり前ながら意識していないと忘れがちのことでもあります。

また著者は、機能集団(軍隊や企業など)のリーダーには、人望の前提として能力が必要だと現実的な主張も述べています。徳だけではリーダーたりえず、実務能力が必要だということです。上に行けば行くほど、能力よりも徳の比率が高まっていくということです。

日本におけるリーダーシップの基盤には朱子学があるという発想をベースにおいた著書であったため、朱子学も勉強してみたくなりました。

2008年6月9日月曜日

青春に浸る

最近ビジネス書ばかり読んでいる私を心配した方から、小説を貸していただきました。第2回の本屋大賞を受賞した、青春小説です。

恩田陸 ”夜のピクニック”

とある田舎の高校で毎年「歩行祭」というイベントが開催されます。それは、全校生徒が夜を徹して80キロを歩き通すという毎年の伝統行事です。主人公の西脇融(とおる)は親友の戸田忍と語らいながら歩き、もうひとりの主人公の甲田貴子もまた、親友の遊佐美和子と歩きます。ただ、融と貴子の間には、秘密があって・・・、と、友情や恋愛感情だけでなくいろいろな想いが交錯する作品です。

登場人物の感受性の豊かさ、言葉を交わさなくても通じ合っているところ、純粋な信頼関係で結びついているすがすがしさに、フィクションだとわかっていながらも心が洗われます。以下、いくつかいいなと思ったせりふ。

「だけどさ、雑音だって、おまえを作ってるんだよ。雑音はうるさいけど、やっぱ聞いておかなきゃなんない時だってあるんだよ。おまえにはノイズにしか聞こえないだろうけど、このノイズが聞こえるのって、今だけだから、あとからテープを巻き戻して聞こうと思った時にはもう聞こえない。おまえ、いつか絶対、あの時聞いておけばよかったって後悔する日が来ると思う」

「大体、俺らみたいなガキの優しさって、プラスの優しさじゃん。何かしてあげるとか、文字通り何かあげるとかさ。でも、君らの場合は、何もしないでくれる優しさなんだよな。それって、大人だと思うんだ」

「母親や、友人や、女の子たちから無償の愛を与えられているし、それを当たり前だと思っている。なのに、恐らく、彼自身だけは自分が幸せだとは思っていないのだ。まだ自分は何も手に入れていないと思っている」

と一応メモっておくけど、小説読んで文脈の中で捉えないと、せりふだけ書いても意味わからないな。

ひとを思いやる感受性の豊かさと、純度の高い信頼関係の大切さに触れた一冊でした。たまにはこういう作品を読んで、心に潤いを与えないと、と思ってしまいました。

2008年6月4日水曜日

金井先生の慧眼

キャリアに関するすばらしい本を読みました。

ハーミニア・イバーラ ”ハーバード流 キャリア・チェンジ術”

表題だけ見ると転職あっせん本みたいでいまいちですが、その実は非常にしっかりとしたリサーチに裏づけられた、実践的なキャリア論で、「アイデンティティの確立」を目的としています。

キャリア論のほとんどは、「自分を深く見つめて自分が本当にしたいこと、望むものを発見すること」を重要視していますが、この本はまるで逆。自分の将来像を複数持ち、それを行動に移して次々と試すことが重要、という主張です。簡単に言えば、「内省して自分自身を見つける」のではなく、「行動して自分自身になる」のです。

著者は終盤にまとめとして、「新しいキャリアを見つけるための型破りな9つの戦略」をあげています。

①行動してから考える。行動することで新しい考え方が生まれ、変化できる。自分を見つめても新しい可能性は見つけられない。

②本当の自分を見つけようとするのはやめる。「将来の自己像」を数多く考え出し、その中で試して学びたいいくつかに焦点を合わせる。

③「過渡期」を受け入れる。執着したり手放したりして、一貫性がなくてもいいことにする。早まった結論をだすよりは、矛盾を残しておいたほうがいい。

④「小さな勝利」を積み重ねる。それによって、仕事や人生の基本的な判断基準がやがて大きく変わっていく。一気にすべてが変わるような大きな決断をしたくなるが、その誘惑に耐える。曲がりくねった道を受け入れることだ。

⑤まずは試してみる。新しい仕事の内容や手法について、感触をつかむ方法を見つけよう。今の仕事と並行して実行に移せば、結論を出す前に試すことができる。

⑥人間関係を変える。仕事以外にも目を向けた方がいい。あんなふうになりたいと思う人や、キャリア・チェンジを手助けしてくれそうな人を見つけだす。だが、そうした人をこれまでの人間関係から探そうと考えてはいけない。

⑦きっかけを待っていてはいけない。真実が明らかになる決定的瞬間を待ち受けてはいけない。毎日のできごとのなかに、いま経験している変化の意味を見いだすようにする。人に自分の「物語」を実際に何度も話してみる。時間が経つにつれ、物語は説得力を増していく。

⑧距離をおいて考える。だがその時間が長すぎてはいけない。

⑨チャンスの扉をつかむ。変化は急激にはじまるものだ。大きな変化を受け入れやすいときもあれば、そうでないときもあるから、好機をのがさない。

いつも手元に置いて、悩んだときに開きたくなる本です。この本は神戸大学の金井壽宏先生(日本のキャリア論の第一人者)が監修しているのですが、それにしても金井先生が監修する本はいい本ばっかりだなぁと感心してしまいます。もちろん金井先生ご自身の著書も私はたくさん読んで勉強させていただいています。

2008年5月12日月曜日

自作レシピとセルフカウンセリング

今日はお台場のビッグサイトでアパレルメーカの社販がありました。仕事の関係で入場券をもらったので行ってみました。これまで社販というのは行ったことがなかったので興味があったのですが、敷地が広すぎるのと、人混みがすごいのとで落ち着いて見て回れず、「これなら定価でいいから、お店でゆっくり買いたいな・・・」と思ってしまい早々に出てきてしまいました。

帰りに食材を買い、夜は久々に自炊しました。ピーマンと納豆をオリーブオイルで炒め、細いパスタにあえるという酷い思いつき料理ですが、なかなかおいしかった。食事しながらさらっと本を読みました。

金井壽宏 ”会社と個人を元気にするキャリア・カウンセリング”

経営学であるキャリア論の話と、心理学、特に臨床でカウンセラーをしている方のお話をまとめたもので興味を持ったのですが、それほど目新しい話はありませんでした。ちょっといいなと思った言葉は、「修破離(しゅわり)」という言葉です。意味は、「型から入り、真似をし、工夫して自分らしさを出し、最終的には型から離れる」ということです。私はスポーツでも、研究でも、仕事でも、まずは型から入るタイプなので、とても共感できる表現です。

「修破離」をもう少しかみ砕いて、以下のような提言しています。
①自分を貫くことにこだわれ
日本の会社ではつい自分を会社にあわせがち。もう少し言いたいことを言ったほうがよい。議論することが大事だ。

②仕事・愛・遊びを心にもて
フロイトは精神の健康に、「仕事」と「愛」が必要だと説いたそう。これに「遊び」(ブレーキの遊びという意味と、遊牧する、つまり自由に動けるという意味も含まれている)を加えてよい。日本人はあまりにまじめで、型にはまることは上手だが、それを破るのは苦手なので、強制的にでも遊びを重視すべきだ。

③フォロー・ユア・ハート
自分の心の声に従い、志高いレベルで、わがままになれ。

3つ挙げていますが言いたいことは同じで、「そんなに会社に自分をあわせることばかりに苦しまないで、わがままになりなさい」ということです。このほかにも、実際のキャリア・カウンセリングでの応答をカウンセラーが克明に例示していたりして、参考になります。カウンセラーの主張も、「自分の器以上のことはできない。自分の意志決定や行動、自分のいる環境、また自分に降りかかる災難も含めて、実は全てが自分にとってちょうどいいようにできている」という発想が根本にあります。確かに、こう考えると気が楽になります。

ネガティブな意味でのストレスだけでなく、将来のキャリアをどう描こうかと迷っているときのポジティブなストレスも、うまくコントロールしていないと、精神的な健康を維持するのは難しいなとあらためて気づかされました。

2008年5月11日日曜日

久々に大前研一を読む

最近休みの日にしか投稿しなくなってしまっていますが、今後は気持ちを入れ替えてちゃんと更新します。今日はグロービスで朝から研修受けて、出席メンバーと昼から飲みながら盛り上がり、そのまま英会話学校に行ってどんなサービスがあるのか、説明を聞いてパンフレットをもらってきました。そろそろやろうかな、英会話。

で、今日の本題は以前読んだ本へのコメントのとりまとめ。この本は借り物で、明日返さないといけないし。

大前研一 ”心理経済学”

大前さんの意見はいつも刺激的で、時に冗談なのか本気なのかわからないことすらありますが、問題提起に対して必ず解決策を提案するところは、さすがコンサルタントだなと感じます。誰にでもわかりやすくて、おもしろい。

今回の話は要するに、「日本人はいざというときのために貯蓄しているが、いざ、なんて死ぬまで来ない。お金は貯めないで使いなさい。日本の個人資産は1500兆円もあり、それが市場に流れ出れば日本の世界的な影響力は一気に高まる。」ということだと思います。本の中で記憶に残った部分をメモっておきます。

・日本人に対する警告について、おもしろかった意見
①国債を発行し続け(日本人にのみ買わせ続けて)、マネーサプライを増やし続けているにもかかわらず物価が上がらないのは、国民の心理が冷え切っているから。ただし、日本人の集団心理として、ひとたびインフレとなればハイパーインフレとなる可能性がある。インフレに歯止めがかからず円預金は急激に外貨に流れたりするかもしれない。日本はそういう危ない状況にある。

②「第3回AXAリタイアメントスコープ(2007年1月)」のアンケートによると、「誰に貯蓄を残しますか?」という問いに対し、日本以外の国では「使い切る」と「相続人に引き継ぐ」を合計して70~80%となっており、使途を決めているが、日本では「未定」が70%を超える。お金の使い道が狭い高齢者層に金融資産が偏在し、さらに遺言も生前贈与もしないため、その資産が消費にまわらないことが、日本の景気が回復しない一因だ。

③(大前さんが以前日本法人代表をされていた)マッキンゼーでは、世界で最も優れた運用アドバイザーがいて、幹部向けに資産マネジメントのアドバイスをしてくれるサービスがある。これからの収入格差は、仕事から得る収入以上に、運用によって生じると考えるべき。

④内閣府「高齢者の生活と意識に関する国際比較」第5、6回調査によると、日本人は現在の経済的充足度において、「困っていない」と回答する人が85%と他国と比較して圧倒的に高い。一方で、将来の資産の充足度について「足りない」と答える人が53%と、こちらも圧倒的に高い。つまり「過度な将来不安」が、日本の個人消費が冷え込む原因の一つに挙げられる。

⑤世界で最も裕福な日本人が、老後をアクティブにエンジョイしていないように見えるのは、そういう行動パターンが頭に入っていないことも一因だが、友達がいないことも挙げられる。だから、一人でお金を使わない趣味を楽しんで過ごし、景気が上向かない。

・おもしろいと思った提案
①生前贈与した人、年金を辞退した人に特典をつける。例えば課税控除、フラットタックス(所得税に累進制を適用せず、比較的低めの比率にすること)、医療費クーポンなど。

②アクティブシニアのコミュニティをつくる。米国にある「ラグナ・ニゲル」という街は一大リタイアメント・タウンであり、この街から学べることがたくさんある。55歳以上のみ入居でき、要介護になったら退去しなければならない。子供の訪問は許されるが、同居は許されない。入り口に鍵がかかる門があり、住人以外は入れない。敷地内に270ものクラブがある。などなど。高齢者が遊ぶ街なので消費は活発、レジャー施設や店舗が多数オープンするので雇用が生まれ、若者も集まる。欧米ではこういう街がたくさんある。

③世界首都東京としての都市計画を打ち立てる。その資金として「購入すれば住民税を免除する免税債」を発行する。

④リバースモーゲージを導入する。そのために、住宅を一般的な金融商品とするべく、基本的な間取りが汎用的な設計にする。

⑤日本国民の個人資産は1500兆円あり、10兆円規模のファンドなら150本できる。カルパースで25兆円、GICで38兆円など、運用資金で10兆円を超える規模のファンドは世界でも大きな影響力を持てるが、日本ならそれを数十本作れるポテンシャルがある。世界で最も優秀なファンドマネージャの個人名がついた、あくまで政治色の無い、10兆円規模の「シグニチャー・ファンド」をつくる。

⑥日本人は総じて保守的だが、ひとたび変わる方向に向かえば一気に進むという特徴がある。一人の企業家が、日本を変える。HISで航空料金の価格破壊を起こした澤田秀雄氏、インターネット料金を世界で最安水準にした孫正義氏など、一人の天才が世界を変える時代である。松下幸之助氏、川上源一氏(ヤマハ)など、日本の革命は歴史的に見ても、一人の民間人が行ってきた。

⑦新しい時代を生きていく上での個人としてのライフプランとしては、英語力、合意形成をしていける力、リーダーシップを身につけ、30代後半までに世界のどこか、できれば複数の国で5年以上の経験を積むことが必要。時間と資金を投資する感覚を持つこと。40代、50代になったら資産運用を勉強すること。

・その他おもしろかった意見
①「ITは生産性向上に寄与した。それはITが価値の源泉だからだ」という論理は誤解。「付加価値の創造主体としてのIT」は一過性の現象であり、いわゆる先行者利益。「生産性にITが寄与する」という理論すら、日本では事情が異なる。というのも日本は米国と産業構造が異なり、低生産性産業=規制産業であり、規制の理由は雇用の保護であり、失業者対策無しに規制を緩和することはできないからだ。

②ターミナルの集約化を進めるべき。港湾の集約化をしないと中国やシンガポールにハブ港を奪われ続ける。空港についても、羽田と成田の不毛な戦いをやめて、羽田に集約して羽田をピカピカに磨き、アジアのハブの地位を目指すべき。

③中国と台湾は、経済面において相互依存関係をますます強めている。中台関係ほどではないにしても、日中関係も完全に相互依存関係となっている。よって、中国による台湾や日本への攻撃はない。中国政府が最もおそれているのは反映から取り残された農民の蜂起であり、軍隊はその平定のために存在する。そして、米国は日本よりも中国との関係を重視するようになってきている。

問題提起、提案がエネルギッシュで、読んでいて元気が出てきました。大前さんのご意見は刺激的なだけに、好き嫌いがはっきりしそうですが、私は結構好きだなと思いました。

2008年4月7日月曜日

キャリアの節目

最近キャリアについてよく考えます。以前読んだキャリアの本を再度読み返したところ、発見が多くて驚きました。 

金井壽宏
”働く人のためのキャリア・デザイン”

「キャリアの節目」で立ち止まり、しっかりデザインすることが重要だという内容です。キャリアの節目では「トランジション」というという心理的危機が発生しており、臨床心理学者のウィリアム・ブリッジズ氏はこれを以下のようにモデル化しました。

①「終焉」 何かが終わる時期
②「中立圏」 混乱や苦悩の日々
③「開始」 新しい始まりの時期

サーカスの空中ブランコで、前のブランコを手放し、新しいブランコに手が届いていない状態を、「中立圏」と定義しているところが慧眼ですね。

トランジションのプロセスは、ネガティブな変化(例えば失恋して、自己を振り返り、立ち直って強くなる、など)に伴って発生するだけでなく、自分自身が変化を望んでいるときでさえ生じる(例えば、結婚や子供の誕生、昇進、待望の海外転勤など)とのことです。このときに大事なことは、トランジションが「終焉」から始まることを認識することです。終焉をくぐらなかった場合に限って、過ぎてしまった過去を振り返ってしまうのだそうです。

ロンドン・ビジネス・スクールのナイジェル・ニコルソン氏は、

①新しい世界に入る準備をする
②実際にその世界に入り、新たなことに遭遇する
③新しい世界に順応していく
④慣れて、安定化する

というサイクルでモデル化しています。私はブリッジズのモデルの方が好きかな。

このようなキャリア・トランジション論に基づいて、キャリアの節目だけは見逃さず、ちゃんとデザインしよう。そして、それ以外のときはキャリアのことばかり考えて頭を抱えていないで、ドリフト、つまり流れに身を任せようというのがこの本の主旨です。そして、キャリアをデザインできたら、夢を描けたら、信じて行動することが大事。信じて行動すると成果が出て、自分の方針をもっと信じることができる。行動力や無力感は学習され、循環されるということです。

著者は最後に、自信の自身のトランジション・モデルを提唱しています。

①キャリアに方向感覚を持つ
②節目だけはキャリア・デザインする
③アクションをとる
④ドリフトも偶然も楽しみながら取り込む

「じゃあどうすれば自分が今節目にあるということを自覚できるのか?」という問に対しては、「節目かなと思ったら、まずその可能性があると思って立ち止まってみるのがよい」とのこと。

節目を捉え、よいキャリアを描いていくのが目的ですが、その「よいキャリア」について、著者は多数の定義を紹介しています。私が一番気に入った定義は、「物語の多いキャリア」です。著者はこう言っています。

「千夜一夜物語ではないが、自分が意味のある話をすれば、さらに一日命乞いができるとしたとき、あなたは、作り話ではなく自分のキャリアを語ることによって、何日生き延びることができるか。」

そういうキャリアを歩むため、キャリアの節目をしっかりと認識して、次の一歩デザインし、それができたら自分の判断を信じて行動を起こしたいと思います。

今週は土日フルタイム出勤でした。今はゆっくりと将来について考えるべき、節目の時期だと自覚しているのですが、そういうときに限って忙しかったりするのです。