2009年4月12日日曜日

生涯プロフェッショナル

書き込みが月イチになってしまっていますが・・・なかなかこまめにやれないものです。ずっと前に読んでいたのですが書き込むタイミングを逸していた本があります。

Elizabeth Haas Edersheim
”マッキンゼーを作った男 マービン・バウアー”

久しぶりによい本だと思いました。最前線の現場の情報や知恵をトップに届け、組織の運営について客観的なアドバイスを与える仕事を経営コンサルティングと名づけたマービン・バウアー。そのマービンが59年間をささげたマッキンゼーの話です。倫理観に基づき自分のルールを厳格に守るマービンの思想・行動をまとめておきます。

・マッキンゼーは会社ではなくプロフェッショナル・ファーム。事業計画はなくあるのは大志。モノやサービスの買い手である消費者のためではなく、依頼人であるクライアントのために働く。
・気取った言い回しや婉曲な表現はしない。本当のことだけを正確に単純明快に話す。
・気になることや賞賛すべきことがあれば、すぐに手書きでブルーのメモに書いて社内に回覧させる。対話するだけでなく、文字に書いて明確に示すことが重要。
・服装には厳しい。靴は磨いてあるか、ブルーのシャツを着ているか、靴下は地味か、ひげはきれいに剃ってあるか、など。クライアントに信用されるためには、クライアントと同じような格好、無難な格好にしておけと指摘する。
・パートナーシップ形態にこだわり、株式公開には大反対。コンサルタントはIバンカーのように大金持ちにはなれないことを納得しなければならない。
・傾いた企業に入り込んでターンアラウンドすることには反対。一流ではない企業と付き合うことは評判を落とすし、マッキンゼーはターンアラウンドが得意ではない。一流のクライアントと付き合う機会を逃したら、もはやマッキンゼーはプロフェッショナルではなく、金儲けのために働くビジネスマンになってしまう。
・面倒見がよい。自分がかかわりを持つ人には頻繁に手書きの手紙を送ったり、式典には必ず出席したり、その人がどういう仕事をしていたかをちゃんと覚えていて、折に触れ「あの件はうまくいったか?」とたずねたり、自分の時間を使う。

また、マービンはプロフェッショナルとしてのリーダーシップを6項目挙げています。

①顧客の利益を最優先し、それ以外のことを考えない
②裏表なく正しいことを曲げないスタンスを維持しつつも、常に人の話に耳を傾ける
③とにかく事実にこだわり、事実に立脚する
④解決策を行動に結びつける
⑤すべてのメンバーに全力を尽くさせ、一分一秒を無駄に使わせない
⑥職業倫理を徹底させ、組織の信頼を築ける行為に対しては毅然と対処する

そのほか勉強になったのは、コマーシャル・ソルベンツ社へのコンサルティングの話。まだジェームズ・O・マッキンゼーの下で働いていたマービンは、コマーシャル・ソルベンツ社会長に調査結果を直言。指摘は正しいものの、会長は激怒。それについてマッキンゼーはマービンに、「君の結論はただしい。だが二つの間違いを犯した。年齢と状況判断だ。まず私に報告すべきだった。私から言えば、同じことを言っても彼はあんなに腹を立てなかっただろう」と指摘した。いくら正しいことを言っても自分の息子のような人間から直言されたら受け入れられない。相手の立場から自分がどう映るのか、自分の言葉がどう響くのか、相手の反応を考慮に入れなければ、どんな判断も適切にはなりえないことを学んだ、という経験です。

多くの経営者の尊敬を集め、精力的に働きながらも全く私欲がなく、99年の人生を全うしたプロフェッショナルには頭が下がります。