2009年8月9日日曜日

テレビの概念が変わる日

家庭の中心であるテレビを巡り、総合電機各社は激しい戦いを繰り広げています。テレビを押さえればテレビとリンクするその他の家電を支配できるからです。ですが、個人的にはそろそろ「インターフェイス戦争」にシフトしていくように思います。つまり、「テレビをつけたときの最初の画面を誰が支配するか」ということです。

テレビには番組表やニュースが実装されるようになりました。ユーザはチャンネルをザッピングするのではなく、番組表を見てみたいテレビを選びます。現状、テレビ起動時のインターフェイスはテレビをつくったメーカが支配していますが、遅かれ早かれ、この画面をマイクロソフトやヤフー、グーグルが奪いにくるでしょう。インターネットのポータル画面戦争と同じように。

インターネット企業はパソコンのポータルを支配したのと同様、強力な検索エンジンで勝負を仕掛けてくるでしょうが、テレビのユーザは検索なんて面倒がるのではないかと思います。電源入れたらあとは見るだけ、というのがテレビのよさなのだから、ポータルは番組表や天気予報を掲載したり、お勧め番組や情報を提案してくるようでなくてはなりません。さらに、ユーザインターフェイスはパソコンのような複雑なものでは受け入れられないでしょう。リモコンのボタンを1,2回押せば目的のコンテンツにありつけるようでなくては、テレビのユーザは見向きしないでしょう。

インターフェイス戦争になれば、俄然ゲーム業界にチャンスが生まれると思います。彼らは寝ても覚めても直感的なインターフェイスのことを考えているからです。

現在のように、「電源を入れると電源を消したときの局の番組が流れる」から、「電源を入れるとまずポータル画面が表示される」と変わると、テレビのそもそもの位置づけが変わります。広告収入のありかたも変わるでしょう。テレビをつけるとポータルが示され、ユーザはテレビ番組を選んだり、情報を仕入れたり、ゲームをしたりし、出かけるときには携帯をテレビの画面に近づけてテレビ番組やゲームのリアルタイムな状況ごと持ち運ぶ、近い将来そんな生活が普通になるのではないかと思っています。

こういうライフスタイルをどこが提案してくるか・・・家電メーカかもしれないし、テレビ局かもしれないし、携帯電話会社かもしれないし、アマゾンやグーグルかもしれないし、アップルかもしれません。その中で任天堂も有力な候補かと思います。というわけで、この本を読んでみました。まあ、上記のようなアイデアとこの本の内容は直接関係ありません。以下本の内容の備忘録。

井上理 ”任天堂 驚きを生む方程式”

・岩田社長は、ハル研究所時代の入社二年目の1983年、任天堂がゲーム専用機のファミコンを、マイコンに比べ破格の15,000円で発売した瞬間に、本社京都に直接営業しに行った。それが岩田社長と任天堂の付き合いの始まり。

・スーパークリエイター宮本茂氏は品行方正が嫌い。不良な自分が好きなタイプでパチンコもタバコもやる。が、40歳で健康にはまり、やめた。そしてWiiFitの開発につながっていく。

・任天堂の採用ページでは、岩田社長が現場社員にインタビューする形式をとっているが、本当の面談のような深い内容の会話がなされている。岩田社長はスタッフの担当業務やスタッフ同士の関係性を完璧に把握しており、採用ページへの掲載があろうとなかろうと、密なコミュニケーションを大事にしていることが読み取れる。

・岩田社長のプレゼンにはグラフや表、数字が過剰なほどに多用される。山内前社長の直観力にはかなわないと考えた岩田社長は、科学的裏づけを何よりも大事にする。緻密なデータは現場社員とのコミュニケーションツールともなる。

・任天堂は事業領域を「娯楽」にとどめ、組織も極力コンパクトに抑えている。多角化しない。尖っているから強く、強みというのはそういうものだと岩田社長は考えている。

・拡大もM&Aもしないかわりに、任天堂社員はめったなことでは退職しない。宮本茂氏も他社から相当な金額を積まれても、「こんなに恵まれた場所はない」と残り続けている。ただ、確かに個人報酬はそれほど高くないが、他社が提示する報酬をはるかに上回る「研究開発費」を会社から割り当てられる。「個人のお金と仕事で使うお金はまったく別」と宮本氏は言う。任天堂の研究開発費は多額で年々増加傾向にある。

・横井軍平氏は、山内元社長と車に乗り合わせたとき、「手のひらで隠せる電卓サイズで、サラリーマンがさりげなく暇つぶしできるゲーム機はつくれないか」と提案し、ゲームウォッチのヒットにつなげた。常に企画をあたためていれば、社長と同席したときに提案できる。エレベータトークの典型。

・娯楽産業は「ハード体質:高機能、高品質のものをより安く作ろうとする性質」ではなく「ソフト体質:コンテンツの面白さやルール、仕組みを生み出そうとする性質」が重要。山内元社長が岩田社長を選んだのも、岩田社長がソフト体質だったからとのこと。

・山内元社長は社名に関連して、「人事を尽くして天命を待つというのは違う。人事は尽くせない。努力は際限ない」と語る。一方「人の力が及ばない、運というものはある」とも言っている。いいときは運に感謝し、悪いときは運がなかったと、次へ進む。運を重んじる経営は、常に平静であろうとする経営でもある。

・岩田社長は過去に梅田望夫氏と会ったことがあり、一緒に何かできたらと考えていた。そして、梅田氏が社外取をしていたはてなと組んで「うごくメモ帳」を世に出した。お互い面白いと思える人との関係を大事にする。

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