2008年5月11日日曜日

久々に大前研一を読む

最近休みの日にしか投稿しなくなってしまっていますが、今後は気持ちを入れ替えてちゃんと更新します。今日はグロービスで朝から研修受けて、出席メンバーと昼から飲みながら盛り上がり、そのまま英会話学校に行ってどんなサービスがあるのか、説明を聞いてパンフレットをもらってきました。そろそろやろうかな、英会話。

で、今日の本題は以前読んだ本へのコメントのとりまとめ。この本は借り物で、明日返さないといけないし。

大前研一 ”心理経済学”

大前さんの意見はいつも刺激的で、時に冗談なのか本気なのかわからないことすらありますが、問題提起に対して必ず解決策を提案するところは、さすがコンサルタントだなと感じます。誰にでもわかりやすくて、おもしろい。

今回の話は要するに、「日本人はいざというときのために貯蓄しているが、いざ、なんて死ぬまで来ない。お金は貯めないで使いなさい。日本の個人資産は1500兆円もあり、それが市場に流れ出れば日本の世界的な影響力は一気に高まる。」ということだと思います。本の中で記憶に残った部分をメモっておきます。

・日本人に対する警告について、おもしろかった意見
①国債を発行し続け(日本人にのみ買わせ続けて)、マネーサプライを増やし続けているにもかかわらず物価が上がらないのは、国民の心理が冷え切っているから。ただし、日本人の集団心理として、ひとたびインフレとなればハイパーインフレとなる可能性がある。インフレに歯止めがかからず円預金は急激に外貨に流れたりするかもしれない。日本はそういう危ない状況にある。

②「第3回AXAリタイアメントスコープ(2007年1月)」のアンケートによると、「誰に貯蓄を残しますか?」という問いに対し、日本以外の国では「使い切る」と「相続人に引き継ぐ」を合計して70~80%となっており、使途を決めているが、日本では「未定」が70%を超える。お金の使い道が狭い高齢者層に金融資産が偏在し、さらに遺言も生前贈与もしないため、その資産が消費にまわらないことが、日本の景気が回復しない一因だ。

③(大前さんが以前日本法人代表をされていた)マッキンゼーでは、世界で最も優れた運用アドバイザーがいて、幹部向けに資産マネジメントのアドバイスをしてくれるサービスがある。これからの収入格差は、仕事から得る収入以上に、運用によって生じると考えるべき。

④内閣府「高齢者の生活と意識に関する国際比較」第5、6回調査によると、日本人は現在の経済的充足度において、「困っていない」と回答する人が85%と他国と比較して圧倒的に高い。一方で、将来の資産の充足度について「足りない」と答える人が53%と、こちらも圧倒的に高い。つまり「過度な将来不安」が、日本の個人消費が冷え込む原因の一つに挙げられる。

⑤世界で最も裕福な日本人が、老後をアクティブにエンジョイしていないように見えるのは、そういう行動パターンが頭に入っていないことも一因だが、友達がいないことも挙げられる。だから、一人でお金を使わない趣味を楽しんで過ごし、景気が上向かない。

・おもしろいと思った提案
①生前贈与した人、年金を辞退した人に特典をつける。例えば課税控除、フラットタックス(所得税に累進制を適用せず、比較的低めの比率にすること)、医療費クーポンなど。

②アクティブシニアのコミュニティをつくる。米国にある「ラグナ・ニゲル」という街は一大リタイアメント・タウンであり、この街から学べることがたくさんある。55歳以上のみ入居でき、要介護になったら退去しなければならない。子供の訪問は許されるが、同居は許されない。入り口に鍵がかかる門があり、住人以外は入れない。敷地内に270ものクラブがある。などなど。高齢者が遊ぶ街なので消費は活発、レジャー施設や店舗が多数オープンするので雇用が生まれ、若者も集まる。欧米ではこういう街がたくさんある。

③世界首都東京としての都市計画を打ち立てる。その資金として「購入すれば住民税を免除する免税債」を発行する。

④リバースモーゲージを導入する。そのために、住宅を一般的な金融商品とするべく、基本的な間取りが汎用的な設計にする。

⑤日本国民の個人資産は1500兆円あり、10兆円規模のファンドなら150本できる。カルパースで25兆円、GICで38兆円など、運用資金で10兆円を超える規模のファンドは世界でも大きな影響力を持てるが、日本ならそれを数十本作れるポテンシャルがある。世界で最も優秀なファンドマネージャの個人名がついた、あくまで政治色の無い、10兆円規模の「シグニチャー・ファンド」をつくる。

⑥日本人は総じて保守的だが、ひとたび変わる方向に向かえば一気に進むという特徴がある。一人の企業家が、日本を変える。HISで航空料金の価格破壊を起こした澤田秀雄氏、インターネット料金を世界で最安水準にした孫正義氏など、一人の天才が世界を変える時代である。松下幸之助氏、川上源一氏(ヤマハ)など、日本の革命は歴史的に見ても、一人の民間人が行ってきた。

⑦新しい時代を生きていく上での個人としてのライフプランとしては、英語力、合意形成をしていける力、リーダーシップを身につけ、30代後半までに世界のどこか、できれば複数の国で5年以上の経験を積むことが必要。時間と資金を投資する感覚を持つこと。40代、50代になったら資産運用を勉強すること。

・その他おもしろかった意見
①「ITは生産性向上に寄与した。それはITが価値の源泉だからだ」という論理は誤解。「付加価値の創造主体としてのIT」は一過性の現象であり、いわゆる先行者利益。「生産性にITが寄与する」という理論すら、日本では事情が異なる。というのも日本は米国と産業構造が異なり、低生産性産業=規制産業であり、規制の理由は雇用の保護であり、失業者対策無しに規制を緩和することはできないからだ。

②ターミナルの集約化を進めるべき。港湾の集約化をしないと中国やシンガポールにハブ港を奪われ続ける。空港についても、羽田と成田の不毛な戦いをやめて、羽田に集約して羽田をピカピカに磨き、アジアのハブの地位を目指すべき。

③中国と台湾は、経済面において相互依存関係をますます強めている。中台関係ほどではないにしても、日中関係も完全に相互依存関係となっている。よって、中国による台湾や日本への攻撃はない。中国政府が最もおそれているのは反映から取り残された農民の蜂起であり、軍隊はその平定のために存在する。そして、米国は日本よりも中国との関係を重視するようになってきている。

問題提起、提案がエネルギッシュで、読んでいて元気が出てきました。大前さんのご意見は刺激的なだけに、好き嫌いがはっきりしそうですが、私は結構好きだなと思いました。

0 件のコメント: