2008年6月4日水曜日

金井先生の慧眼

キャリアに関するすばらしい本を読みました。

ハーミニア・イバーラ ”ハーバード流 キャリア・チェンジ術”

表題だけ見ると転職あっせん本みたいでいまいちですが、その実は非常にしっかりとしたリサーチに裏づけられた、実践的なキャリア論で、「アイデンティティの確立」を目的としています。

キャリア論のほとんどは、「自分を深く見つめて自分が本当にしたいこと、望むものを発見すること」を重要視していますが、この本はまるで逆。自分の将来像を複数持ち、それを行動に移して次々と試すことが重要、という主張です。簡単に言えば、「内省して自分自身を見つける」のではなく、「行動して自分自身になる」のです。

著者は終盤にまとめとして、「新しいキャリアを見つけるための型破りな9つの戦略」をあげています。

①行動してから考える。行動することで新しい考え方が生まれ、変化できる。自分を見つめても新しい可能性は見つけられない。

②本当の自分を見つけようとするのはやめる。「将来の自己像」を数多く考え出し、その中で試して学びたいいくつかに焦点を合わせる。

③「過渡期」を受け入れる。執着したり手放したりして、一貫性がなくてもいいことにする。早まった結論をだすよりは、矛盾を残しておいたほうがいい。

④「小さな勝利」を積み重ねる。それによって、仕事や人生の基本的な判断基準がやがて大きく変わっていく。一気にすべてが変わるような大きな決断をしたくなるが、その誘惑に耐える。曲がりくねった道を受け入れることだ。

⑤まずは試してみる。新しい仕事の内容や手法について、感触をつかむ方法を見つけよう。今の仕事と並行して実行に移せば、結論を出す前に試すことができる。

⑥人間関係を変える。仕事以外にも目を向けた方がいい。あんなふうになりたいと思う人や、キャリア・チェンジを手助けしてくれそうな人を見つけだす。だが、そうした人をこれまでの人間関係から探そうと考えてはいけない。

⑦きっかけを待っていてはいけない。真実が明らかになる決定的瞬間を待ち受けてはいけない。毎日のできごとのなかに、いま経験している変化の意味を見いだすようにする。人に自分の「物語」を実際に何度も話してみる。時間が経つにつれ、物語は説得力を増していく。

⑧距離をおいて考える。だがその時間が長すぎてはいけない。

⑨チャンスの扉をつかむ。変化は急激にはじまるものだ。大きな変化を受け入れやすいときもあれば、そうでないときもあるから、好機をのがさない。

いつも手元に置いて、悩んだときに開きたくなる本です。この本は神戸大学の金井壽宏先生(日本のキャリア論の第一人者)が監修しているのですが、それにしても金井先生が監修する本はいい本ばっかりだなぁと感心してしまいます。もちろん金井先生ご自身の著書も私はたくさん読んで勉強させていただいています。

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