2008年6月30日月曜日

セールスマンのノウハウ

昨年度面倒を見てくれたマネジャーから本を薦められました。分厚くて時間がかかりましたが、読み終わりました。

ロバート・B・チャルディーニ
”影響力の武器”

交渉術の古典的な本で、人間の自動反応のパターンの例とその反応を引き起こすスイッチの入れ方を取り上げてた本です。人を自動的な反応に駆り立てるものとして7種類あるそうです。

①コントラスト
アパレルのセールスは、スーツとセーターとネクタイを購入しようとするお客には、まずスーツを買わせるのだそうです。セーターやネクタイはスーツほど値が張らないため、コントラストで、お客に高価なセーター、高価なネクタイを買わせることができるという方法です。

②返報性
他の本では互恵性(レシプロシティ)なんて言われたりもしていますが、例えば高価なプレゼントをもらったら、何かお返しをしなければならないという義務感を発生させると言うことです。
この発展型で「ドア・イン・ザ・フェイス」という手法があるそうですが、これは譲歩をすることで相手の譲歩を引き出す手法です。「1万円貸してほしい」と言われ、拒絶した場合に、「じゃあ千円でいいから貸して」と言われると貸してしまうことを利用したセールス手法です。

③一貫性
何らかの悩みで困っている人が、自分を救ってくれそうな研修を見つけたとする。研修の説明会に参加した後、信憑性に確信を持てないにもかかわらず、研修費用を振り込んでしまう現象です。説明会に参加する、つまりその研修に対して何らかのコミットメントをしてしまった以上、その人にとってはその研修こそが自分を問題から解放してくれるものでならなければならないのです。
この発展型としては「フット・イン・ザ・ドア」という手法があり、訪問のセールスマンがドアに足を挟んで玄関に入ってくることを許したら、そのセールスマンと契約を交わすことも許してしまうのだそうです。
他にも、「ローボール・テクニック」といって、嘘でも良いからとにかく先に小さな承認を取り付け、それから本当の依頼をする方法もあるそう。

④社会的証明
どこにでもいそうな普通の人が商品を推奨するテレビコマーシャルがありますが、これは消費者自身に、自分と近い人が商品を気に入っていると思わせる方法だそうです。つまり、ひとはどう振る舞えばよいのか確信が持てないとき、他社の行動を参考にして、それも類似性の高い他社の行動を参考にして自分の行動を決めるそうです。

⑤好意
セールスマンのことを好きになってしまったら、ものを買ってしまうという単純な主張です。では、人はどういう人を好むかというと、外見が良い人、自分に似ている人、お世辞を言ってくれる人、よく知っている人、だそうです。
モーターショーなどに女性のモデルがたくさんいるのは、車に関心が高いのは多くは男性であり、女性への好意が車への好意に伝染するからという理屈だからだそう。

⑥権威
例えば健康食品を、セールスマンが紹介するのと医者や学者が紹介するのとでは影響がまるで違います。権威を発揮するものとして、著者は肩書き、服装、装飾品の3つを挙げています。身なりの大事さは知り合いの金融機関のセールスマンも強く主張していました。

⑦希少性
よくあるパターンですが、「限定」や「本日限り」の文字に踊らされてしまうということです。人には心理的リアクタンスというものがあり、機会が喪失してしまいそうになると自動的に反発するのだそうです。

判断を保留している状態、不安や緊張を強いられている状態、思い悩んでいる状態など、人は一刻も早く思考から待避したい状態になると、そこから解放されるために自動反応をする習性を持っていて、そのパターンを利用したセールステクニックは強力だということです。

膨大な事例が紹介されているのですが、小粒で具体的すぎて、著者の主張を裏づけるには不十分ではとも思ったのですが、書籍が高価であり、また大量の文章を読ませることで読者に達成感を味わわせる(「③一貫性」の利用)ことと、実証実験を紹介することで多くの学者が自分の主張の裏付けを行っている(「④社会的証明」と「⑥権威」の利用)ことにより、自分の意見の正当性を読者に納得させようとしていて、まさに自分の主張をこの書籍自身で実践しているところがおもしろかったです。

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