2008年6月9日月曜日

青春に浸る

最近ビジネス書ばかり読んでいる私を心配した方から、小説を貸していただきました。第2回の本屋大賞を受賞した、青春小説です。

恩田陸 ”夜のピクニック”

とある田舎の高校で毎年「歩行祭」というイベントが開催されます。それは、全校生徒が夜を徹して80キロを歩き通すという毎年の伝統行事です。主人公の西脇融(とおる)は親友の戸田忍と語らいながら歩き、もうひとりの主人公の甲田貴子もまた、親友の遊佐美和子と歩きます。ただ、融と貴子の間には、秘密があって・・・、と、友情や恋愛感情だけでなくいろいろな想いが交錯する作品です。

登場人物の感受性の豊かさ、言葉を交わさなくても通じ合っているところ、純粋な信頼関係で結びついているすがすがしさに、フィクションだとわかっていながらも心が洗われます。以下、いくつかいいなと思ったせりふ。

「だけどさ、雑音だって、おまえを作ってるんだよ。雑音はうるさいけど、やっぱ聞いておかなきゃなんない時だってあるんだよ。おまえにはノイズにしか聞こえないだろうけど、このノイズが聞こえるのって、今だけだから、あとからテープを巻き戻して聞こうと思った時にはもう聞こえない。おまえ、いつか絶対、あの時聞いておけばよかったって後悔する日が来ると思う」

「大体、俺らみたいなガキの優しさって、プラスの優しさじゃん。何かしてあげるとか、文字通り何かあげるとかさ。でも、君らの場合は、何もしないでくれる優しさなんだよな。それって、大人だと思うんだ」

「母親や、友人や、女の子たちから無償の愛を与えられているし、それを当たり前だと思っている。なのに、恐らく、彼自身だけは自分が幸せだとは思っていないのだ。まだ自分は何も手に入れていないと思っている」

と一応メモっておくけど、小説読んで文脈の中で捉えないと、せりふだけ書いても意味わからないな。

ひとを思いやる感受性の豊かさと、純度の高い信頼関係の大切さに触れた一冊でした。たまにはこういう作品を読んで、心に潤いを与えないと、と思ってしまいました。

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