2008年11月11日火曜日

いまさらながら

今さらではありますが、ちょっときっかけがあったので、手にとって読んでみました。といっても私は読むのは初めてでしたが。

大前研一 ”企業参謀”

MBAの入学生や、新入社員のビジネスマンがよく読む本らしく、確かに基礎的なことが書かれてあります。ただし、かなり昔に書かれた本にもかかわらず、とても体系だっていてわかりやすい。具体的ですぐに使える考え方も掲載されています。気になった点をいくつか要約しておきます。

・問題発見のコツは、問題点の絞り方を現象追随的に行うこと。現象の洗い出し、グルーピング、抽象化を通じて課題を抽出する。

・中期経営計画の策定は、以下の8つのプロセスですすめる。
①目標値の設定
②既存事業をあるがままに行った場合の基本ケースの確立
③原価低減改善ケースの算定
④市場・販売改善ケースの算定
⑤戦略的ギャップの算定
⑥戦略的代替案の摘出
⑦代替案の評価選定
⑧中期経営戦略の実行計画策定

・⑤戦略的ギャップとは、オペレーショナルな努力の限界値と目標値のとの差であり、戦略によってこれを埋めることを狭義の企業戦略と呼ぶ人もいる。

・事業ポートフォリオ管理は「自社の強みを表す変数」を横軸に、「業界の魅力度を表す変数」を縦軸にとったマトリクスで評価する。PPMはその一例。

・マーケティングは「製品・市場戦略」と呼ぶべき。すべての経営課題は製品・市場戦略にその根源と解決の緒を見出すことができる。製品・市場戦略策定のプロセスは、以下の7つのプロセスを、ひとつずつの製品、市場について丹念に実施することが必要。
①市場性の動的把握
②内部経済の分析
③競合状態の把握
④KFSに照らした自社の強さ、弱さの客観的理解
⑤改善機会について仮説の抽出、評価
⑥改善実施計画作成、実施
⑦モニタリング、軌道修正

・参謀が戦略思考家たることを妨げる五戒とは以下のとおり。
①「if」という言葉に対する本能的恐れを捨てよ。代替案を考えることに不精するな。最悪のケースも常に想定せよ。
②完全主義を捨てよ。相手よりもほんの一枚上をゆく市場戦略を、タイミングよく実施することが勝負のカギだ。
③KFSについては徹底的に挑戦せよ。常に何がKFSであるかという認識を忘れず、全面戦争ではなくKFSに関する限定戦争に、徹底的に挑め。
④制約条件に制約されるな。一足飛びでも理想的な状態を思い描ければ、制約条件を構成する障害物が特定される。
⑤記憶に頼らず分析を。常識や疑問の余地のない対象に対しても分析を怠らないこと。

・企業戦略とは「競争相手との相対的な力関係の変化を計画すること」であり、収益性の改善や組織改革、人材育成などのオペレーショナルな改善とは区別するべき。頭の働かせ方も全く異なる。その方法には3つある。
①経営資源の配分の面で、相手よりも濃淡をつけ、KFSに集中的に資源を注入して優位に立つ方法
②直接競合していない製品における技術や販売網などをうまく当該製品に反映させる方法
③相手のやらないことをこちらが積極的に開拓して市場を切り開く方法

・KFSを見つけるためには企業活動を上流から下流へ分解する。そして、硬直状態に陥った場合には、常識的な意味でのKFSから離れることを考える。

・成功した事業には、次の四つの要件が必ず見られる。
①事業領域の定義が、明確になされている。
②将来の予言ではなく、現状の分析から将来の方向を推察し、因果関係について極めて簡潔な論旨の仮説が述べられている。
③自分のとるべき方向について、いくつかの可能な選択肢のうち、比較的少数のもののみが採択されている。また、選択された案の実行に当たっては、かなり強引に人、もの、金を総動員して、たとえ同じようなことを行っている競争相手がいても時間軸で差が出ている。
④基本仮定を覚え続けており、状況が全く変化した場合を除いて原則から外れない。

さすが、考え方をすぐにでも応用できそうなレベルにまで具体化されていて、海外で教科書として使われているのもよくわかります。なかなか勉強になりました。こういう本を30代で書いたという能力と経験は恐るべきだと思います。


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