2008年3月24日月曜日

経営のプロが考えていること

なにげなく手に取った本ですが、思ったよりもおもしろかったです。

八城政基
”八城政基 MBA講義”

MBA講義とありますが、八城さんの一人語り+質疑応答で、
勉強すると言うよりは読み物の本です。

まず著者の八城さんは、大学を卒業して今のエクソンモービルに入社し、
35歳で日本支社の取締役になり、その後アメリカに渡り、また帰国し、
45歳で日本支社の社長になり、50歳くらいでアメリカの親会社の筆頭副社長を7年務め、
また帰国して(自分で設定した)定年退職します。
60歳でシティバンクに請われて入社し、その後シティコープ・ジャパンの会長まで務めた
すごい人。その後もいろいろやって、いまは新生銀行の会長をされているみたいですね。
日本を代表するプロフェッショナル経営者と言ってもよいでしょう。

生粋の外資系経験から、日本企業の経営を多面的な観点から洞察するというもの。
2000年の書籍なので、情報が古いところはありますが、経営のプロはこういうことを
考えているのかと、大変勉強になります。以下備忘録。

経営トップ
・アメリカ企業が日本企業と一番違う点は、「トップが戦略を立てること」である。
・日本のストック・オプションは額が低すぎて機能しない。
・アメリカの株主総会は、CEOが1人だけで3時間程度答弁する。
・企業はトップ次第である。

コーポレート・ガバナンス
・取締役会の本来の存在意義は経営執行の監視である。
・日本の執行役員制度は取締役会メンバー削減のためだけに使われているまやかし。
・取締役会は社外取締役を中心に構成しなければ意味がない。
・アメリカでは指名委員会や報酬委員会も社外取締役中心に行われ、お手盛りは不可能。
・海外拠点のコーポレート・ガバナンスを考えると、現地法人にするか支店にするかは
 「取締役会を持つか否か」という意味で違いが出てくる。

人材マネジメント
・大学を出て入社した社員は、5年程度の間に見極めをつけて、
 マネジャーコースやテクニカルスタッフコースなどに乗せるべき。
・最優秀評価をつける社員に対しては上司が具体的な育成計画を作成するべき。
・エクソンにはマネジャーをつくるトレーニングはなく、難易度の高い仕事を経験をさせる。
・人事評価はダブルチェック、トリプルチェック機能が果たされるようシステム化し、
 社員が信頼できる制度になっていないとうまくいかない。
・収益を生まない社員は少なければ少ないほどよく、実働部隊が大事だ。

ステークホルダー論
・日本ではシェアホルダー重視よりもステークホルダー重視の姿勢が尊ばれる。
・日本では持ち合い制度のもと、株主間の利害関係の深さに大きく違いがある。
・シェアホルダーバリューを高めることが経営の一番大切なことだと焦点を絞るべき。

社外コンサルタント
・コンサルタントを使うときは漠然と相談してはいけない。狙いを定めてそこだけ聞く。
・コンサルタントがよい意見を出しても使う側が社内でリーダーシップを持っていなければ、
 会社はその案を実行しない。
・アメリカのマネジメントコンサルティングは成長が鈍化しており、コンサルビジネスは
 フィナンシャルサービスかITコンサルでないと厳しくなっている。

他にもいろいろと非常に具体的なお話が出てきておもしろいです。

その中で、八城さんが一番主張していることは、「社外取締役制度の導入」です。
私も企業が国際的に評価を受け、海外からの投資を受けるためには、
世界に誇るコーポレート・ガバナンスが必要で、その肝は社外取締役制度にあると
考えていたので、非常に共感できました。

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