2008年3月5日水曜日

SRIセミナーに行ってきました

SRIセミナーに行ってきました。なかなかおもしろかったです。

講演・討論会 「持続可能な社会と金融業」
http://www.sntt.or.jp/jizokukinyuu/sympo20080303.html

2/27のBlogにて立てた仮説をいくつか検証できました。

今回のセミナーは「SRIの観点からの企業評価」というところにフォーカスしていて、
いくつかの切り口が提案されました。
挙げられた企業評価の方法は、例えば以下のようなものがあります。

①各種環境負荷の削減状況の目標達成率
プロセスとプロダクト、つまりライフサイクルで排出する環境負荷に目標値を設定しておき、
その達成率で見る方法。これはオーソドックスな考え方ですね。

②「環境効率指標」=(付加価値額)/(環境負荷量)
環境負荷物質排出1単位当たり、どれだけの付加価値(ここでは営業利益+人件費と
定義されていました)を出しているか。これはおもしろい指標ですね。
プレゼンターは、「この指標は一企業でも計算できるし、特定の産業全体でも、
国全体でも計算できる。例えば国全体だと、環境効率指標=(GDP)/(国家の排出CO2)、
のようになる。競合他社だけでなく、産業や国家をベンチマークできる指標だ。」
とおっしゃっていました。なるほど。応用が利きそうです。

③「EOE」=(CO2排出量)/(株主資本)、「EOA」=(CO2排出量)/(総資産)
ROEやROAの考え方を、CO2排出量にあてはめたんですね。
このEOEやEOAはROEやROAと違って、値が小さいほどよい、という指標なのは
ちょっと美しくないですが、ROEを横軸、EOEを縦軸にして、いろいろな企業の
時系列変化を見せてくれたのはおもしろかったです。
ある企業は、ROE低、EOE高、つまりこのこの2軸からなる表の左上部分から、
変動しながら右下部分に向かっているので、順調に成長してきたと言えるということです。

また、SRIファンドの運用者(このセミナーでは非常に希少な実務者)のプレゼンで、
「企業を非財務指標で評価する場合でも、その情報リソースとして、
最終的に行き着くのは結局 ”有価証券報告書”である。」とおっしゃっていたのが
心に残りました。
2/27のBlogに書いたように、私もそう思っていたからです。

その他、「現在のエコファンド銘柄は、環境への取り組みが評価されて
ファンドに組み入れられているにも関わらず、ファンド組み入れ以降のCO2排出効率を
時系列で追うと、一般のファンド銘柄のCO2排出効率とそれほど変わらない」という
プレゼンがあったり、そのプレゼンに対してグッドバンカーの方が、
「CO2排出量だけを見て、環境負荷を評価しているわけではないので、
そういう分析結果だけで評価結果を議論するのはよくない」と応酬するなど、
非常におもしろかったです。

こういう議論を経て、いろいろなSRI指標が開発され、淘汰され、
企業の情報開示、情報開示方法の標準化が進み、より指標の信頼性が増す、
というサイクルが回っていけばいいなと思います。

そうすれば、投資対象評価というプロセスの中に、
SRIの考え方が自然に入り込んでいくでしょう。

ですが、気になった点もあります。

セミナーはかなり盛況でしたが、会場入室時に名刺回収はなく、出席者は企業人が半分、
大学・研究機関・NPO関係者など企業に属していない方が半分くらいでした。
また、金融機関の関係者はほとんどいなかった様子。
そのため、学会のような雰囲気がありました。

質疑応答で質問していたのも、大学関係者ばかり。
こういうセミナーに金融の実務を担っている方を集めないのはもったいないと思います。

参加は無料でしたし、情報提供以外のねらいがあるはずですが、わかりかねました。
もしかすると主催団体へのリクルーティングなのかもしれません。
それならば、研究機関などの方々を集める意図は理解できます。

個人的には情報収集ができて、大変役に立ちましたが、社会変革の実現を
本気で考えるなら、セミナーを「金融機関や投資家への提案、啓蒙の場」と位置づけ、
実務者をもっと勧誘し、出席者の名刺を集めてデータベース化し、
次につなげる人脈の土台づくりをしたらいいんじゃないかな、と思いました。

セミナーに参加するのは久々でしたが、よい刺激になりました。

2 件のコメント:

jasmin さんのコメント...

指標に関しては、やはり色々と難しい面はありますね>< これらは業種によって比較するためのものなのでしょうか??

おそらくCGの調査からも分かるとおり、必ずしも数字で判断できない部分も出てきてしまったり、あとは本当に定性的な部分で「どう方針や目標を立て、実現へと向かっているのか」に焦点を当てた調査も現状では多いような気がします。(それを数字で達成本気度/可能性といった形で表すことができればよいのかもしれませんが。。。)

あと、グッドバンカーの方がどんなことを話していたのか、とても気になります! 今度ぜひ詳しく聞かせてください。

最後に…、講演をされたFMの方は、本当に憧れの存在なので、私もそんなFMになれたら…と思っています。

tak さんのコメント...

プレゼンしてくださったファンドマネジャーの方は、本当に貴重な存在だと思います。ファンドマネジャーにとって、企業評価手法は当然、競争力の源泉であり、秘密にしたいものであるはずです。
ですが、SRIの本質を考え、自分の投資スタンス、評価手法の一部をあえてオープンにする姿勢は、尊敬に値します。
司会の方も、「実務を担っている方は、なかなかこういう場所には来ていただません。本当に感謝しています。」とおっしゃっていました。

SRIの思想に立ち戻ると、「企業評価方法の公開」は検討すべきテーマだと思います。ですが、全て公開してしまったら、他の投資家がファンドの投資銘柄をトレースできるので、SRIファンドのパフォーマンスはベンチマークを超えられなくなります。この矛盾をどう解消するか。
「評価指標の開発」に加えて、「評価指標の公開」も、近い将来SRIにとって重要なテーマになってくると私は思っています。